オンライン講演「不登校 今昔ものがたり〜栃木県高根沢町フリースクールひよこの家17年」を開催しました

 

【オンライン】第5回年次大会にて、不登校に関するオンライン講演を開催しました。

  

不登校 今昔ものがたり

〜栃木県高根沢町フリースクールひよこの家17年

2020年11月21日(土)11:00-12:00

講師:芳村寿美子氏

 

講師の芳村氏は、栃木県塩谷郡高根沢町の適応指導教室「フリースペースひよこの家」で、開所当時から教育相談員を務めています。養育専門里親でもあり、公私ともに子どもたちの教育ケアにあたっておられます。


各市町村の教育委員会が運営する適応指導教室

適応指導教室(または教育支援センター)をご存じですか?

 

適応指導教室とは、各市町村の教育委員会が、長期欠席をしている不登校の小中学生を対象に、市町村のどこかに部屋を用意し、そこで学習の援助をしながら本籍校に復帰できることを目標に運営している教室です。運営法は各市町村にゆだねられており、スタッフも元教員、現役の教員、専門スタッフなどさまざまです。

 

 

 


古民家の適応指導教室 栃木県高根沢町「フリースペースひよこの家」

ひよこの家は、栃木県塩谷郡高根沢町の適応指導教室です。平成15(2003)年に開所し、今年で18年目を迎えました。

 

ひよこの家は全国でもめずらしく古民家を教室としています。学校が嫌で不登校になったのに、学校を連想させるような施設では通いにくいだろうという配慮から、町が古い農家を借り上げ、適応指導教室として運営しています。庭があり、縁側もあり、囲炉裏もある。そして学校と同じように給食も届くという教室です。

 

ひよこの家がユニークなのは、ハード面に見合ったソフト面にこそあるということに、ここを訪れた人が気づくのはそう時間はかかりません。スタッフたちがまるで家族のように子どもたちに寄り添っています。スタッフたちを束ねるのが、講師の芳村寿美子氏なのです。17年以上にわたり、一貫して不登校の子どもたちに寄り添い、家族と向き合ってきました。

▲のどかな田園地帯にある栃木県塩谷郡高根沢町の適応指導教室「フリースペースひよこの家」。


ひよこの家と当協会の関わり

2010年に、当協会の理事長がひよこの家でアロマボランティアを始めました。当時は栃木県宇都宮市にある作新学院大学で教育研究に携わっていました。大学生たちと一緒に1~2カ月に一度、ひよこの家の家を訪問し、通級生(小中学生)やスタッフの皆さまにアロマコラージュ療法やアロマスプレー、アロマキャンドル作りなどを体験していただく活動を行っていました。

 

2016年にNPO法人を設立し、2017年3月に大学の職を辞したのに伴い、ひよこの家での活動は協会に引き継がれました。今でも当協会のセラピストがひよこの家を訪問し、アロマコラージュ療法のワークショップを開催しています。ひよこの家での活動を知った栃木県内の他の適応指導教室からお声かけいただき、訪問することもあります。

 

ボランティアを受け入れていない適応指導教室もあるなか、活動を続けていけるところにも、ひよこの家や芳村氏、高根沢町らしさが表れています。

▲2014年7月8日、大学生たちと一緒にひよこの家を訪問した時の様子。土間や板の間、囲炉裏のある古民家。おじいちゃん、おばあちゃんの家にいるような安らぎ、温かさを感じます。アロマの香り漂うなか、わいわいにぎやかに作品を作ります。※写真に写っているのは大学生です。通級生は写り込んでいません。


▲2013年11月27日、大学生たちと訪問。晩秋になると囲炉裏に火が入ります。

▲2013年12月18日、ひよこの家にて大学生たちと。左から4番目後方が芳村氏。この日は子どもたちにアロマキャンドル作りを体験してもらいました。


ひよこの家の17年間を振り返ることで、現在の問題点が浮き彫りに

芳村氏によると、不登校の実態は、時代時代に応じて変化してきました。本講演では、不登校の子どもたち、家族、多種多様だといわれる不登校の要因について、開所当時から現在までを振り返り、語っていただきました。

 

芳村氏は、ひよこの家の通級生の変化を、①平成15~22年、②平成22~26年、③平成26年~現在の3期に分けて語ってくださいました。とてもわかりやすい説明で、納得できる分類でした。子どもたちの変化をとおして、各時代や子どもたちを取り巻く環境、さらには教育現場における不登校への対応までもがみえてきました。

 

さらに、変化をとおして、不登校であるか否かに関わらず、現代の子どもたちの特徴、背景にあることが明確になりました。

 

 

 

参加型オンライン講演で情報共有と議論を深めました

 

では不登校の子どもたちは今、何を求めているのか、子どもたちとどう関わっていけばよいのか、支援者に何ができるのか。

 

この点については参加者の皆さまと情報を共有しながら議論を深めていきました。

 

本講演では、お申込の際に事前アンケートを実施し、参加者ご自身の不登校との関わりや興味のあること、本講演に期待することなどを自由に書いていただきました。参加者のお顔を映さない予定だったのですが、今回の参加者は全員が支援者であることがわかり、急きょ、お顔出しをお願いし、ディスカッションに加わっていただいたのです。

 

おかげで、他の支援機関で不登校の子どもたちと関わっている参加者と問題点を共有しながら、かなり突っ込んだ議論を行うことができました。

 

オンライン講演会という初めての試みでしたが、支援者同士の意見交換の場として非常に実りあるディスカッションができました。今後は、不登校の保護者を対象としたセミナー、支援者を対象としたセミナーなど、対象別にテーマをしぼって続けていければと考えております。講師を務めてくださった芳村寿美子さま、率直なお話を聞かせてくださいました参加者の皆さま、誠にありがとうございました。